昔から伝わる迷信、まことしやかにささやかれる都市伝説、我々はそうしたウワサをついつい真に受けたり、踊らされてしまったりすることがよくある。なかでも毛髪に関わる伝承やウワサはかなり多いものだ。つまり、それだけ昔から毛髪を気にしている人が多いということなのだろう。では、はたしてこれら数々のウワサは本当なのだろうか……。その真相を追ってみた。
「ワカメを食べると毛髪が育つ」!?
数多くの人がこのウワサを耳にしたことだろう。そして実践に移した人も少なくないはずだ。結果からいうと、これは医学的な根拠がほとんどない。海藻類に含まれるヨードがタンパク質の代謝に関わっているため、タンパク質からできている髪の毛の生育を促すと勘違いされたためだと考えられる。あるいは海藻が水中で動く様子が髪に似ていることからの連想かもしれない。日本人の場合、スナック菓子しか食べないといった極端な偏食をしない限り、必要量のヨードは摂取できており、むしろ最近はヨードの取り過ぎが問題になっているぐらいだ。
「白髪の多い人は薄毛にならない」!?
白髪になると髪が抜けないというウワサもよく耳にする。自分は若白髪が多いから将来も安心、と思っている人も多いのではないだろうか。ところがこのウワサも医学的には根拠がない。白髪と薄毛には相関関係がなく、白髪になりやすくて薄毛の程度が弱い人の場合には、髪が残っているから白髪頭になるというのが真相だ。
薄毛の人も白髪になっているが、髪が抜けてしまっているから、白髪かどうかわからないということなのだ。白髪を抜くと白髪が増えるというのもウソ。白髪は加齢や遺伝などにより髪の色素を作り出す細胞が活動しなくなり、髪の色が作られない状態だ。抜いて増えるのではなく、抜きたくなるほど目立ち始めたら、後はどんどん白髪が増える年齢になったということなのだ。
意見は分かれるが、例外的に強度のストレスで白髪が増えることはあるらしい。この場合、ストレスの原因が取り除かれれば、次は黒い髪の毛が生えることになる。余談だが、白髪といえば伊勢物語に出てくる「九十九髪」がある。「九十九」は「百」に「一」が足りないから白。齢を重ねた老婆の白髪という意味だ。
「毛髪が太い人は将来抜けやすい」!?
「髪の毛が細い人は将来薄毛になりにくい」と同義。また“男性の場合は”とか“女性の場合は”とかいった条件付きで耳にしたことがある人も多いことだろう。だが、髪質と抜け毛の関係も実は根拠がない。
髪が太い細いを決めるのは遺伝子と生活習慣であり、タンパク質が少ない食事が続くなど栄養状態の悪化から髪の毛が細くなったり抜けたりすることはある。しかし生まれ持った髪の質と薄毛は関係がないのだ。ただ、髪が細いと地肌が見えやすいため、薄毛になったと誤解する人は多いかもしれない。
「髪の毛が早く伸びる人は性欲が強い」!?
このウワサもよく耳にする。特に幼少期にこのウワサで迷惑した人もいるのではないだろうか。髪の毛が伸びるのが早い人は、細胞の代謝サイクルが早く、いたって健康な証。健康だということは、生殖能力にも問題がなく、その意味で“性欲が強い”と捉えられてしまったのだろう。髪の毛を伸ばす体内の何らかの化学物質が性欲と関係しているわけではないのだ。
「朝シャンをすると髪の毛が抜けやすくなる」!?
あまりメジャーなウワサではないが、一部でささやかれている内容だ。そもそも人類には洗髪する習慣はなく、髪を日常的に洗うようになったのはシャンプーが開発されて以降のこと。日本人は、古くから各地に温泉地を拓いたり、江戸時代には銭湯が流行したりするほどの入浴好きだが、当時は髪を結っており、洗髪の習慣はあまりなかった。
だからといって薄毛の人が少なかったかというとそうではない。むしろ洗髪は頭皮を清潔にし、血行を促進させ育毛につながるぐらいだ。ただし、不衛生な水を使うと毛穴に白癬菌の一種が繁殖し髪が抜けたり、シャンプーが地肌に残っていると炎症を起こし、髪が抜ける場合がある。髪を洗う時はすすぎを丁寧に行ってほしい。
さて、ここまで髪の毛にまつわるウワサの数々を検証してみた。結果、ほとんどが根拠のないものと判明した。「おれはワカメを毎日食べているから安心」はNG。「おれの髪質は細いから将来は安泰」というのもNG。医学的に検証された発毛・育毛剤を使うのがよいのではないだろうか。