薄毛に「直接効く」サプリはあるのか
薄毛に限らず、サプリメントの広告には「これで悩みが解決した!」という体験談が華々しく掲載されるのが常ですが、個人の体験談はエビデンスでもなんでもありませんし、本当にその人がそのサプリメントだけで改善したのかどうかは誰にもわかりません。そこがサプリメントの限界であり、医薬品との大きな違いだと思います。
ノコギリヤシやフコイダンの具体的な効能について、私は熟知しているわけではありません。私も男性として気持ちはわかるのですが、残念ながら薄毛に直接効く、毛を生えさせるというのはサプリメントには荷が重いだろうと考えています。
ただ、直接的に髪を生えさせるサプリメントはないとしても、栄養素を補給することによって薄毛を改善に導く、あるいは薄毛・抜け毛を予防することは可能だと思います。
まずよく知られるのは亜鉛。亜鉛は体内でさまざまな酵素の働きにかかわっていて、タンパク質を作り出すのに欠かせないミネラルです。髪の毛も「ケラチン」というタンパク質を材料として作られますから、髪の健康に亜鉛は重要です。ところが亜鉛はストレスや飲酒で消費されるため、現代人は不足しがちです。
ビタミンB群の一つであるビオチンも、アミノ酸の代謝にかかわる酵素の補酵素として働きますから、髪の毛の生成に重要です。
さらにタンパク質(アミノ酸)、ビタミンB6、パントテン酸、ビタミンCなども髪のために積極的に摂りたい栄養素です。女性の場合は鉄も重要です。
「手っ取り早くサプリメントで補給」の前に、基本に帰れ
男性の薄毛は、男性ホルモンが酸化されて「ジヒドロテストステロン」という物質ができ、毛根を傷めてしまうのが原因とされています。ですから男性ホルモンの酸化を防ぐために抗酸化物質をしっかり摂ることも大切です。抗酸化物質の代表的なものとしては、ビタミンA、C、E、ベータカロテンなどのカロテノイド、ポリフェノールなどのほか、アルファリポ酸などがあります。
先の亜鉛やビオチンもそうですが、これらの成分を手っ取り早くサプリメントで摂取するよりも、まず食事から取ることが先決だと私は思います。コンビニ弁当やカップ麺を多食する生活をしている方は、まずそこを見直して、新鮮な野菜や果物、タンパク質をしっかり摂取するよう、食生活を改善してください。
それから男性の薄毛の場合は、フィナステリド(プロペシア)という治療薬があります。耳慣れないサプリメントに手を出すのはお金の無駄になるばかりか、場合によっては健康を損なう可能性もあります。治療薬が存在するのですから、お医者さんでそれを処方してもらって飲むのがもっとも確実な薄毛対策といえるでしょう。
女性の薄毛は、男性とはまた違うメカニズムで起こります。原因はいろいろあるのですが、一般的に多いのが栄養不足によるもの。特に鉄とアミノ酸が不足すると、抜け毛が起こりやすくなります。
「髪の毛が喜ぶ」栄養素摂取が、確実な薄毛対策
最近では無理なダイエットで栄養のバランスが崩れ、抜け毛が起こるケースが増えているようです。またストレスや間違ったお手入れなども薄毛の原因となるようです。最近の女性はカラーリングをするのが当たり前となっていますが、そういうことも関係しているのかもしれません。いずれにしても、食生活の見直しやストレスのコントロールは男女ともにぜひとも行って欲しいと思います。生活習慣が薄毛に与える影響というのは決してバカにはなりません。
この仕事をしていると「栄養失調」の人がどれだけ多いかを実感します。これだけ食生活が豊かになった日本において栄養失調というのもピンとこないかもしれませんが、カロリーは十分に取れていても、ビタミン、ミネラルなどが不足しているケースが本当に多いのです。
髪の毛も「材料」が不足していれば作れません。髪の毛の喜ぶ栄養素をしっかり取ることが、遠回りのようで、もっとも確実で早い薄毛対策だと思います。